
皆さんは上場するということについて、どのようなイメージをお持ちだろうか?
私は多くの企業と接する機会が多いが、上場前と上場後では、それによって企業のイメージ、社風が変わったと感じることが少なくない。
新興市場に上場したD社は、典型的なオーナー企業であり、役員は殆どオーナー一族とその友人で占められていた。D社の人事担当役員T氏は、誰が見てもイマイチな人で、とても部門を管掌できているとは思えなかった。
聞いたところによるとオーナーの奥方の学生時代の友人で、昔から在籍している関係で役員になっていた。能力的には厳しいが、管掌できる部署がないため、人事をとりあえず任されているという状況らしい。D社の人事は、上に立つ責任者がおかしいため部署全体がおかしくなっていた。
実際我々に対するD社人事の対応はひどいものであった。
「先日応募したMさんですが、選考の状況はいかがでしょうか?」
「M?あーあれはダメでしたね。」(社員でもないのに呼び捨て)
「差し支えなければ、今後の参考にしたいので理由を教えて頂けないでしょうか?」
「Mは高卒だからですよ。うちは大卒からですから。」
「でも、Mさんは履歴書を見て頂ければ分かりますが、国立のK大学出身ですが・・・。」
「じゃー違う理由なんでしょうね。」(なんていい加減な・・・)
このような状況なので、D社に入社する転職者はいるはずもなく、D社は年中同じ職種の募集を続けていた。D社人事は、社内で肩身の狭い思いをしつつもオーナーの奥方の友人が役員ということもあり、かろうじて社内に生き残っていた。
このような状況が、D社の上場によって大きく変化していく。
新プロジェクトを立ち上げるも、採用ができないことが原因で進捗しない現状が問題となり、外部からの圧力に耐えられなくなり、あっさりとT氏は更迭されることとなった。T氏のスタッフの殆どが地方工場勤務の辞令が発令され、D社の旧人事部は事実上解体された。その後のD社の人事部には、社内でもやり手と噂されている役員が就任し、まともな採用活動が行われることとなった。
恐らくオーナー社長は、外圧のために人事担当役員T氏を切らざるを得なかったのだろう。3ヶ月おきに会社の財務状況を発表し、進捗状況が悪ければ、業務懈怠だと外部から責められるのは、かなり厳しい環境なのかもしれない。
上場は一般的にはバラ色なイメージだが、D社の人事の方のように厳しい状況になる人も発生する。上場によって我々の仕事がやりやすくなったのは事実ではあるが。