転職道中膝栗毛

食べていくためには

「生活できるだけの給与の会社であればいいです。今の仕事と同じ仕事で、人間関係の良い職場がいいですね。」

Wさん(男性・36才)の勤務しているC社は、M&Aで大手に呑み込まれた。経営陣は一新され、社内の主要ポストには次々と親会社から管理職が送り込まれ、のんびりとした雰囲気から体育会系的な雰囲気に社風が変わった。いつしか、人間関係もギスギスした関係になっていた。
Wさんは、C社での人間関係に嫌気がさして、転職を考えていた。



「うちは持ち家ですし、そんなにそのあたりはお金に困らないのです。ただ、家族が5人いるので食費がものすごくかかるんですよ。結局毎月貯金を切り崩してしまっていて・・・。」

「具体的には月ベースでどのくらいの金額でしょう?」

「そうですね。まったく外食をしないのですが、家族で月に50万円かかってしまうんです。近所のスーパーでしか買い物をしないのに。最も私が一番食べるんですけどね。なので、なかなか条件に合う会社がないんです。」

Wさんは、そう言って恥ずかしそうに笑った。
月に50万円食費に使うとなると、最低一千万程度の年収は必要になる計算になる。今の転職市場では、一千万円を超える求人は、実際にはそんなに多い訳ではない。Wさんの悩みは、もっともなことだった。



6ヶ月の転職活動後、Wさんは、めでたくG社に内定が決定した。G社の提示した給与は、決して高いことはなかったが、転職の決め手はG社の福利厚生にあった。G社の社員食堂では、どれだけ食べても食事は全てタダであり、Wさんは、高額な給与を貰うよりも食事代がかからないほうが得であると判断したのである。

「本当にいい会社をご紹介していただいて感謝しています。人間関係も良い職場ですし。これで安心して130キロの体を維持できそうです。」

Wさんは、そう言ってにっこりと笑った。



G社の人事部長によると、Wさんは早朝から深夜までバリバリと働き、高い評価を受けているということである。まあ、Wさんのニーズを考えれば、その働き方は当然のことではあるが・・・。
Wさんは、G社の過酷なハードワークは、まったく意に介していない。社内のバラエティーに富んだ食事に満足しているようである。あとは、Wさんの社内での食べる量が問題となり、G社の福利厚生制度が縮小されなければ、きっとうまくいくに違いない。

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