
Kさん(26才・男性)は、元々山口県で医薬品のルートセールスを行っていた。昼間はライトバンでのんびり医療機関に医薬品を配達し、夜は病院の院長を接待する毎日を送っていた。Kさんは、今ののんびりとした生活に飽き飽きしており、東京のベンチャー企業に転職を希望していた。
今回、めでたく東京のシステム会社のA社の内定を勝ち取ったのである。
転職してからのKさんの生活は、今までとは180度違うものになった。山口では有り得ない毎朝の通勤ラッシュを体験し、深夜になっても明かりが消えない高層ビル街で働くのは思いのほか大変であった。さらに、Kさんは入社して数ヵ月後に衝撃の事実を知ることとなる。
A社は、社員は、企画力がありアクティブなスタッフが揃っている。そんなある時、とある会話から自分の周りのスタッフの多くがアルバイトであることを知るのである。
「ISO27001の外部審査対応とか業務フロー作成とか任されているけど、なんでSさんはアルバイトなんですか??」
「え?なんかバイトじゃまずいですか?FさんやHさんもバイトですよ。うちの会社じゃ結構普通ですよ。」
なんとKさんよりも周りの年下のアルバイトの方が、はるかに仕事ができる状況だったのである。
Kさんは、職場でのストレスから、我々の眼から見ても明らかに元気がなくなっていた。
「最近どうも疲れが抜けなくて・・・。職場のストレスですかね?」
「どういう生活をされているんですか?」
「そうですね。仕事があまりできないので、追いつけるように頑張っているんです。会社を出るのは23時すぎですかね。それから家に帰って、2時位まで走ったり、近所の小学校で鉄棒をしたりしてから寝ます。前職が接待で遅い毎日だったので、3時位まで眠れないのです。」
我々は、Kさんに新しい仕事は誰でもそんなに直ぐに慣れることはないこと、第二新卒としての採用であり、即戦力とすぐに期待されての採用でないので今そんなにあせる必要はないこと、夜は運動をせずにしっかり寝て体調管理をする点などをアドバイスした。
後日、Kさんは晴れ晴れとした顔でやってきて、私にこう言った。
「僕は、今までの仕事は実質配送と接待しかしてないし、出来ないことを嘆いても仕方ないことに気付いたんですよ。今は隣のアルバイトと同じくらいになることが目標です。」
転職は、生活環境が大きく変わるため、転職後に大きなストレスを抱えることは少なくない。特にKさんのように生活が180度変わるとなおさらである。
A社の人事部長によると、Kさんは最近はやる気を見せ頑張っており、評価もなかなからしい。また会う時には、きっとデキる社員に成長しているに違いない。