転職道中膝栗毛

縁結び

我々の仕事は、結婚斡旋業のようなものだ。仕事を探す人は、自分の給料、社風、仕事内容など自分の価値観に沿って探し、求人企業はそれぞれのポリシーにしたがって採用を行う。

一般的には、優秀で仕事が出来る人が労働条件の良い企業に入社しやすいということはあるが、必ずしもそうとは限らない。結婚相手に求めるものが、人それぞれ違うように、求人企業が採用において求職者に求めるものは実際かなり違うものである。



S社は地方都市における有名企業であり、従業員は約250名、毎年売上高は順調に推移し、その業務内容からも今後の経営状況も堅調と思われる企業である。残業が殆どなく、また、業務内容に比べて給与水準が高く、社員の平均勤続年数も高い。オーナー社長のキャラクターが濃いことを除けば、働きやすい企業であった。

Wさん(男性 32才)は、どちらかというとのんびりした方で、いわゆる自分のペースで仕事をしたいタイプだった。キャリア相談の際にも「仕事よりプライベートが大事。残業はしたくない」と強調をしていたため、私はどの仕事を紹介しようか大変悩んでいた。

一般的には男性の30代の中途採用は、管理職又は管理職候補のオーダーが多く、即戦力を求める傾向にある。普通の人は、新しい環境ですぐに活躍するのは難しいため、意欲的に仕事に取り組まないとなかなか結果を出しづらい。そのため、Wさんのような方は、転職をしてもうまくいかないことが実際多いのである。

悩んだ結果、私はWさんにS社を紹介した。思いのほか面接受けが良く、S社の人事部より内定の電話が私の元に届いたのであった。



「差し支えなければ採用の理由を教えていただけないでしょうか?今後、御社に紹介をさせていただく参考にしたいのですが。」

「そうですね。面接での印象は正直×だったのですが・・。今回は内定を出しました。実はうちはオーナーの奥様が占いに凝っていましてね。採用は占いで決めるんです。Wさんはうちの会社との相性が抜群だったようです。」

「えっ?占い?ですか。」

「はい。実は私もオーナーの奥様から占いで名前を変えろと言われ、本名と仕事で使っている字が違うんですよ。おかしいと思いますけどね。そうそう、このことは内密にしておいてくださいね。」

私は、WさんにS社の内定を伝えたところ、WさんはS社ののんびりとした社風が気に入っており、転職を決意したのであった。



私はWさんとS社との縁結びには成功したが、ちょっと複雑な気持ちである。双方とも喜んでいるが、どうも正攻法での縁結びには思えないのである。Wさんの入社後も相思相愛が永く続いて欲しいものである。

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