転職道中膝栗毛

復縁工作

皆さんは復縁工作という言葉をご存知だろうか?
別れた恋人とよりを戻すための工作をするサービスが探偵事務所にあるらしい。我々人材紹介エージェントも同様のことを依頼される場合がある。内定を辞退した企業に行きたくなった求職者、一旦断った人を後で欲しくなった企業など一旦別れた相手とよりを戻したいのは、恋人同士だけではないのである。



IT系企業のC社は、ここ数年メキメキと業績を伸ばしているIT系企業である。C社の社長は、会社の財産=人材という考え方で、人材採用には力を入れており、人事には社内でも優秀なスタッフを配置していた。

しかし、どんなに優秀な人事担当者でも時には失敗がある。C社の人事課長のFさんは、私の紹介したJさん(男性・35歳)を2次面接で不合格にした1週間後に、こんな電話を私にかけてきた。

「実は大変申し上げにくいのですが・・・。以前不採用のご連絡をさせて頂いたJさんについてですが・・・いまさらですが、内定を出したいということとなりまして。身勝手なお願いだと思いますが、なんとかJさんの入社の説得をお願いできないでしょうか?」

「別れた恋人同士みたいなもので、一旦断ると難しいですよ・・・。Jさんはプライドが高い方だと思いますし・・・。」

「Jさんの場合には、現場では必要だという結論だったのですが、社長が人は今すぐいらないんじゃないかと面接会議で発言をして選考が事実上止まってしまったのです。あの時はお待たせする訳にも行かなかったのでお断りしたのですが、今は幹部全員一致でJさんが必要という結論になりました。」



Jさんはいつもご夫婦で、私のところにキャリア相談に来ていた。Jさんの奥様は、Jさんの転職先がなかなか決まらないという事情もあり、C社に入社して欲しいと考えていた。私はJさんにC社の意向を伝えると共に、奥様に事情を説明し、共同戦線を張り、Jさんへの説得を開始したのであった。

私と奥様の懸命の説得にもかかわらず、Jさんの意思を変えることはできなかった。Jさんは「一旦断られた会社に入社したくない。私にもプライドがある」とかなり頑なであった。



それから、3日後のことである。Jさんから電話がかかってきた。

「C社にお世話になることとしました。宜しくお願いします。」

「えっ?どうしてですか?」

「実は昨日C社の人事課長のFさんが自宅に面接のことを謝りにきました。なかなか企業の担当者が、そこまでできないと思いまして・・・。私もつまらないことで意地を張りすぎました。」

ストレートに誠意を見せる-なかなかできないが、説得にはこれが一番なのかもしれない。私の復縁工作も、今回ばかりは完敗だったようである。

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