
「Nさん!また右手と右足が同時に出ていますよ!」
Nさん(男性・26才)は、小規模の電気メーカで働いていた。今の会社では社長の信頼を得て、全ての経理業務を1人で任されていた。勉強熱心で税理士試験の簿記論、財務諸表論にも合格しており、とても真面目で勉強熱心だった。ただ、面接が大の苦手で面接でかたっぱしから落ち、我々のところに相談に来たのである。我々はNさんのために、7日間の面接特訓-名づけて「面接ブートキャンプ」を実施することになったのである。
Nさんには、仕事が終わった後に毎日来てもらい、深夜まで面接特訓を施すこととなった。我々は受付時の対応、歩き方、部屋の入り方から考え付くあらゆる想定問答を教え込んだ。最初は、少しでも角度の違う質問をすると、ネジが飛んだ機械のように吹っ飛んでしまうNさんであったが、毎日の特訓の成果があって7日目にはようやく普通のレベルに近づいてきた。
8日目は、いよいよNさんの希望する企業面接の日である。さすがにこれだけの特訓をした候補者は、我々にとっても初めてである。自分のことのようにNさんの面接の結果に期待を膨らませていた。
「すみません!あれだけやったのにまた右足と右手が一緒に出てしまいました。毎日親身になってやっていただいたのに申し訳ありません。」
Nさんは本番でどうやらあがってしまったようだった。7日間の特訓の成果はあったのだろうか?
その夜、Nさんの応募したK社の人事部長から連絡があった。
「いや~。今日のNさんはだいぶ緊張していたみたいですね。実はうちの経理部長が気に入っていまして。元々うちはものづくりの会社ですから、職人みたいのが多くて、あんまり口がうまいのはいないのですよ。最初はどうかと思ったのですが、うちのことも大変勉強されていました。次回は役員面接になります」
何とか一次面接をクリアしたNさんは、また我々に面接の特訓を希望してきた。K社の面接は2週間後であり、毎日特訓して欲しいとのことである。ここまで我々に頼られるとうれしいことも事実ではあるが・・。
我々の方が面接ブートキャンプでつぶされてしまいそうである。