
我々は実に様々な人と出会う。広島から来たYさん(26歳・男性)は、私にとって忘れられない人である。
「とにかく東京で働く場所を紹介してください。どこの会社でもいいんです。」
(そんなことはないだろう・・・)
「東京はかわいい子も多いし、給料も高いんじゃないですか~」
(それもないだろうな・・・)
「内定が出たら1週間以内に働けます。」
(今、広島に住んでいるのに本当に大丈夫なんだろうか?)
Yさんは、思い込みが激しく、そそっかしく、深くものを考えない、いわゆる危なっかしい相談者であった。
我々は、このような転職者の方であると正直緊張する。
何故かというと、こういう転職者の方はその場のノリで重要な決定をすることがあり、慎重に我々が対応しないと彼の人生を誤らせかねないということがある。また、こういう方は紹介先の企業からクレームが来やすいのも事実である。
Yさんが、我々の紹介で内定が決定したのはアウトソーシング事業を展開中のC社であった。
「すみません。どこに住んだらいいんでしょうね。どこか不動産屋を紹介してください。」
「えっ?住む先のアテもないのに1週間後の入社で大丈夫なんですか?」
「まったく考えていませんでした・・」
結局、C社との入社日をいまさら変更することは難しく、Yさんはホテル住まいをせざるを得ない状況になった。Yさんが、お金がないと泣きついてきたため、私は都内で一番安い山谷のビジネスホテルを世話しなければならなくなった。
「Yさん。計画的に物事を進めないと信用をなくしますよ。」
「分かってますよー。今回はたまたまです。ちゃんと東京でもやっていけますから心配しないで下さい。」
あれから半年が経つ今でもYさんから電話がかかってくる。
「今日、財布を落としてしまってどうすればいいですかー?買ったばっかりの財布なんです。」
また、転職の話ではないなあと思いつつも、私はYさんの話に耳を傾ける。
Yさんの様な方の面倒を見るのも我々人材紹介エージェントの宿命なのだろう。